大分県臼杵市の妖怪を語り継ぐ古谷美和(こやみわ)さんインタビュー。
ー 今日は幽霊の格好で来てくれたんですね!ありがとうございます!早速ですが、古谷さんはどんな子供だったんですか?
古谷 両親が飲食店を経営していて家にいない時が多かったので、おばあちゃんっ子でしたね。 昔話や妖怪話など、おばあちゃんから色んな話を聞いたことが自分の原点になっています。
ー 当時から妖怪は好きだったんですか?
古谷 妖怪も好きですが子供の頃はお経と猫が大好きでした。 おばあちゃんの影響でお経が好きになって、修学旅行では友達がお菓子やキャラクターグッズをお土産に買っているところ、 自分はお経本を買って集めていましたね。
ー ずいぶん渋い子供ですね。でも猫が好きなところは子供らしいですね!
古谷 猫といえば小学2年生の時に、どうしても猫が飼いたくなって親にお願いしたら「面倒みきれんやろ」と言われて、しょうがないから死後硬直でカチコチになった猫の死体を拾ってきて「これやったらエサも食べんしウンコもしないから飼っていいやろ!」と親に言ったら、怒 られたことがありました。
ー 猫が好きすぎてちょっと行き過ぎちゃったという事でしょうか...。
ー 中学や高校時代にはどんな思い出がありますか?
古谷 臼杵小学校から臼杵東中学、そして大分県立水産高等学校に進学しました。高校生の頃は、授業で魚の解体をしたりし て、内臓や骨に触れることが多かったですね。骨はシャープでカッコいいなと思っていました。授業では食品科学や食品衛生を学んでいたので、菌類にも 興味がありましたね。
ー 年頃の女子高校生が好きそうなオシャレやスイーツではなく、内臓・骨・菌類という予想の斜め上を行く言葉が出てきてちょっと驚きました。
古谷 オシャレも興味がありましたよ。今、右の耳たぶの穴に印鑑が入っていますが、この穴は高校時代に安全ピンで自分で開けました。当時は印鑑ではなく、つまようじを入れていて食後によく使っていましたね。
ー オシャレと機能性を兼ねた合理的な耳ピアスですね。
ー 社会人になって妖怪話をするようになったキッカケは何でしょうか?
古谷 高校卒業後、大分の情報誌の臼杵支局員としてライターをやっていました。その後、イラストや漫画を描く仕事をしたり、引っ越し屋で働いたりしていました。今でも和ダンスや冷蔵庫を運ぶのは得意です。運び方を教えましょうか?
ー 荷物の運び方も興味深いのですが、話を妖怪話のキッカケに運んでください。
古谷 はい。臼杵の市報に4コマ漫画を連載していた時に、河童の話を描いたら、臼杵ミワリークラブ(以下:UMC)か ら『臼杵の妖怪を広く知らしめてくれたで賞』で表彰されま した。それがキッカケとなってUMCの初期メンバーになり妖怪話を語り継ぐことになりました。
ー UMCとは、どんなクラブ何ですか?
古谷 UMCの誕生のキッカケは 臼杵の商工会議所青年部の人たちが、お祭りの時に地元の妖怪を使った町歩きゲーム『赤猫クエスト』を作ったことです。その時のメンバーが「俺らの世代で妖怪のことを子供たちに語り継いでいこう!」と妖怪を使った町おこしをするチームを作り、1998 年に UMC が誕生しました。
ー それで市報の4コマ漫画に妖怪のことを描いた古谷さんが表彰されたんですね。
古谷 そうです。そして『赤猫クエスト』はゲームのルールを説明するのが難しいから、町を歩きながら妖怪話を語る今のスタイルになりました。夏は夜になると提灯を持って妖怪話をしながら町を歩き、最後は臼杵城址で肝試しをしたりしています。
ー 楽しそうですね!子供たちの反応はどうですか。
古谷「妖怪とか嘘だ!うちの父ちゃんの方が強いぞ!」とか強がっている子ほど、だいたいビビってます。(笑)その辺の木の陰に隠れちゃってね。そんな強がる子ほど驚かせて泣かせる。子供を泣かして喜ぶ悪い大人の集まりです。(笑)でも、子供には怖いものがないといけんと思います。理屈じゃなくて、 なんかよくわからんけど恐ろしいものがある。あれは人間の力ではどうにもならんと吹き込んでいた方が、まっすぐ育っていくんじゃないかな。
ー そういえば『妖怪ウォッチ』や『ゲゲゲの鬼太郎』など妖怪人気はずっと続いていますね。 古谷さんにとって妖怪はどんな存在ですか?
古谷 妖怪は友達です。近い存在で何か大切なことを教えてくれる存在。昔の人は大切な教訓を子供に伝えるために、普通に話しても伝わらないので妖怪を登場させて印象に残るようにしたのではないでしょうか。
ー 子供に教訓を伝えるためのご先祖様からのメッセンジャーということでしょうか。深いですね。これからの目標は何でしょうか?
古谷 これからも臼杵の妖怪を語り継いでいきたいですね。臼杵のじいちゃんばあちゃんに、 UMC メンバーで妖怪聞き取り調査をしていますが、まだまだ 妖怪話があるので調査続けて、 形に残し次の世代に繋いでいきたいです。嬉しかったのは、昔、 肝試しに参加した子が成長して UMC に入ってくれたんですよ。 私自身が語り継ぎながら次の世代の語り部を育てていきたいと思います。 (聞き手:カボスひろし)